2014年1月30日木曜日

工場見学②

こんにちは!
前回の工場見学レポートに引き続き、1月20日に行ってまいりました後半戦です!

と、その前に告知!

現在、筑波大学田中洋子ゼミでは、2014年度のゼミ生を大募集しております!
今まで、少ないながら、田中ゼミの紹介をこのブログを通してやってまいりました。
田中ゼミは、学群・学類を超えた全学対象のゼミです!毎年テーマが変わり、その都度テーマに沿った書籍・映像などを読んだり見たりしながら、毎週議論をしています!そしてそのあとはゼミ生の家で恒例のごはん会もあります!「田中ゼミおもしろそうだなあ」と思った学生は、ぜひぜひ!田中先生あてに連絡をとってみてください!
あ、田中先生は怖い人じゃないです笑 むしろとてもフレンドリーなので気軽にメールしてくださいね!
田中洋子先生メールアドレス:e-mail: tanaka.yoko.ft [at] u.tsukuba.ac.jp ※ メールアドレスの [at] は@に書き直してください

なんか書いていて、自分で「サークルの宣伝みたいだ…」なんて思ってしまった…笑

ちなみに、フェイスブック、ツイッターでも活動の報告をしてますんで、是非ソッチの方も見ていただければと思っています!
Facebookページ「田中洋子ゼミ2013」
Twitter:@tanakasemi2013


では本題でございます!

③水戸労働基準監督署

みなさんは、このドラマをご存知だろうか?

あらすじ:労働基準監督署に勤める監督官の段田凛は法令違反を発見すると、決して見逃すことはできず、ひたすら真面目というかむしろ全く融通が利かないほど違反して いる企業や経営者を追及する。同じ署に勤める同僚たちは、署長をはじめ、仕事上大きな問題を抱えることを避けようとする傾向があった。初めのうちは彼女の 行動に翻弄されるが、彼女のひたむきな仕事ぶりを目の当たりにして、次第に使命感を高め、不当な扱いを受けている労働者のために奮闘するのだった。(Wikipediaより)

日本テレビの水曜22時〜竹内結子主演のテレビドラマで、 講談社の漫画雑誌モーニングの「ダンダリン一○一」が原作となっている。

キャッチコピーは、
「働くひとを守るために、働くひとがいる」

最近の労働問題を取り上げた映像作品は、ほかにも
2008年「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」主演:小池徹平
2008年「フツーの仕事がしたい」監督:土屋トカチ
etc...

日本の労働環境が注目を集めていることは明らかです。

そんなわけで、ドラマで話題となった労働基準監督署を訪問し、実際のところドラマみたいなことになってるのか!?という気持ちがちょこっとありつつ、いろいろとその実情を伺ってまいりました!

 大きめの会議室での説明はちょっと緊張。

 労働基準監督官の矢島さんは筑波大卒で親しみのある方でした!

 ケーススタディの説明。


労働基準監督署は、主に労働に関する「法」を用い、それに違反する企業を捜査・捜索、必要があれば差押・検挙する機関。前回の記事に出てきた、ユニオンやPOSSEと比べて、速攻性が高い印象を受けました。ケーススタディにもいくつかの事例が出てきましたが、やはり素直に非を認めない悪徳企業に対し、「法」を持ち出すことができるのは強いなぁと感じました。

労基署に寄せられる相談内容では、「いじめ・嫌がらせ」に関するものの件数が過去最高になるなど、日本の労働世界をパトロールする必要性は高まっているという話でした。そんな中、摘発数などは変動ないものの、労基署の機能として、「防止」を軸にしてきた従来の活動から「改善」へのシフトがあったということでした。メディアによる注目が高まるにつれ、労基署の活動が社会的に認知されるようになったとはいえ、未だ需要過多の状況は続いているそうで、労働相談を受ける相談員の数・質ともにまだまだ必要だという話でした。

前回訪問したPOSSEやユニオンとの住み分けに関しては、絶対的な違いである「公的機関である」という立場でうまく分業していくとのこと。現在の日本における労働の問題は、生活問題とも密接に絡み合っていることを考えると、やはり法による仲裁が可能な公的機関の力は大きいと感じました。

また、ドラマの「ダンダリン」についての話も少し出て、どうやら見ている人と見ていない人にわかれるみたいでした(笑) とはいえ、以前まで意識さえされていなかった「労働基準監督官」という仕事が脚光を浴び、世間に知られるようになったのは喜ばしいことだとおっしゃっていました。



労働基準監督署をあとにした一行は、
ちょっとおしゃれなレストランで小休止。

 あいかわらずこいつは、それとなく写真にうつりこんできます。

 米粉のパンがおかわり自由でした。笑 うまし。

 アメリカから帰ってきた愛子が誕生日だったのでお祝い!
 ¡¡Feliz Cumpleaños!!


さて、気を取り直して、今回の工場見学最後の目的地へ。

④日本ナショナル製罐株式会社(石岡市)
今回の工場見学、そのラストを飾ったのが、石岡市にある製罐会社、日本ナショナル製罐さんです!

「製罐」と言われてもピンと来ないかと思いますが、要するに缶詰や飲み物の缶を作っている会社。

去年度のゼミテーマである「食の工業化」に通ずるところもありますが、僕らの生活に近いようで遠い「缶」の工場を今回は見学してきました!

まずはじめに会議室でのプレゼン。

取締役の島田さんはユーモアたっぷりの素敵な方でした。


印象的だったのは、6Sという「作法・躾・整理・整頓・清掃・清潔」を仕事の原点としていること。製造するアルミ缶を単なる金属ではなく、人の口に触れるものとして安心・安全を保証するために、6Sの徹底をしているとのことでした!
ゼミ生も6Sの重要性を体感するためにちょっとしたテストを体験。写真がないのが残念ですが、ナス君がポテンシャルの高さを発揮したようです笑

他にも、地域貢献と社員貢献(!?)のための「ちょっと良い話」制度や、環境に配慮したソーラー発電のシステムなどを紹介していただきました。
創業から40年の会社は、紆余曲折ありながらも、創業当時から日本の「モノづくり」の伝統を受け継ぎ、人を大事にする風土が根付いているなぁと感じました!

その後工場の内部を見学。

この薄いアルミの板(紙?)から缶を作ります!
いろんな缶を作る型。

 ご満悦なみわさん。

工場の中は音や匂いが強いところもあり、ゼミ生は防音用の耳あてをつけて見学しました。 中で作業している人たちはなにもしていなかったので心配になりましたが、そこに対するケアは万全とのこと。

 至る所缶の山!

これだけのビールがあったら一生困らなそう笑

 最後に記念撮影。


今回の工場見学では、約1年間にわたって書籍や映像を通して勉強し、議論を重ねてきた、日本の「労働世界」と、それに関する問題の解決に勤しむ人たちの現場を、自らの目で見ることができたというところに、収穫があったのではないでしょうか。
私達は、1年間のゼミで労働知識を習得し、中には就活を経験し、働くことのリアルを多少なりとは理解したつもりになっていました。しかし、実際にその現場を自らの足で回り、話をきき、議論をしたあとで感じたのは、所詮僕らはまだ一大学生に過ぎなかったのだ、ということでした。
ゼミの締めくくりとして、実際に自分たちが積極的に労働現場に赴いて、自分の関心事、関係するものとして落としこむことができたところが有意義だったな、と思います。

最後に、見学を受け入れて頂いた首都圏青年ユニオン、POSSE、水戸労働監督署、日本ナショナル製罐株式会社様に、感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。

(文責:からさわ)




2014年1月21日火曜日

工場見学①

皆様お久しぶりです。あけましておめでとうございます!
4年生が卒論でやられていたため、活動が途切れていた田中ゼミですが、
新年からまたリスタートいたしました!!ぱちぱち

さて、田中ゼミは、例年年明けに「工場見学」という名の現地見学を実施しています。
行き先はゼミのテーマによって変わるので、毎回バラバラですが、
今年は「「経済発展と労働の変容」というテーマの沿って、2日間の日程で見学場所を決めました。

今回は1月17日に行われた1日目のレポートです!



①首都圏青年ユニオン

みなさんは「ユニオン」というものをご存じだろうか?
ユニオンとは、従業員が所属している企業を問わず、個人単位で加盟できる労働組合のことである。ユニオンは、従来型の企業別労働組合とは違い、複数の企業や異業種の企業の労働者が、その構成メンバーとなっている。
今回はその中でも首都圏を中心に、主に若者の労働問題に当たるユニオンである、首都圏青年ユニオンを訪ねた。今回お話をしてくださったのは、首都圏青年ユニオン事務局次長の神部紅(じんぶ あかい)さんだ。

一見優しそうなお兄さんのような風貌であるが、その口調とまなざしには、まっすぐと現代の若者が抱える労働問題の解決を目指す意志が感じられた。神部さんは、学生時代より自主的にユニオンを結成し、路上生活者や若者ホームレスの支援を行ってきた。

神部さんの話から、労働問題だけを解決するのではなく、相談者一人一人が安心して暮らしていける状態を目指し、生活の問題にも取り組む姿勢が垣間見られた。また、ユニオンはただ単に個人の労働問題の解決を目指すだけではなく、その会社自体にも働きかけ、最終的に社会全体を変革しようという意志を持っており、なによりそのフットワークの軽さと積極性には、ただただ脱帽してしまった。



企業内の労組は、会社の息がかかっていることも多く、根本的な問題の解決に結びつかない場合もある。ユニオンは、2人からでもだれでも結成できる労働組合という点をより社会的に認知させ、多くの人に「泣き寝入り」で終わるのではなく、相談者が納得できる解決方法を提示している。

ユニオンの運営費用は、組合員による会費と「支える会」による寄付によってまかなわれている。しかし、その額は決して多いとは言えず、ユニオンで働く職員はほぼボランティアも同然だ。「決して長くは続かない」と神部さんが言うように、運営母体の脆弱さが組織のネックになっている。また、その社会的な認知度は高いとは言えず、活動実態も知られていないのが現状だ。その上、特に若年層に根付いた「労組」に対するマイナスのイメージが、ユニオンを遠い存在にしてしまっているのかもしれない。

ゼミメンバーの中でも4人が今年の4月から社会人となる。もちろんそのような事態がないのがベストではあるが、万が一自分の働く現場で問題が起きた時、ユニオンの存在は大きな助けになるのではないかと感じた。





②NPO法人POSSE

次に一行が向かったのは、下北沢にある何の変哲もない地域の集会所。
しかしそこでは連日、 業種・職種を問わず様々な労働現場からのリアルな相談が、電話を介して行われている。

そう、この訪問の目的は、先日の筑波大学学園祭での田中ゼミ企画、「働く現場のリアル」でお招きした、川村遼平さんが事務局長を務めるNPO法人POSSEの実際の活動を見せていただくためである。

先日の講演会の様子はこちら。


今回説明をしてくださったのは、POSSEメンバーである佐藤さんと今岡さんである。
今回は2班に別れ、今岡さんが生活相談、佐藤さんが労働相談にのることとなった。
佐藤学さんはPOSSEでの活動を始めて5年目であり、

就活中にリーマン・ショック下で自分だけ勝っておかしい状況を野放しにしたくないという気持ちから、大学三年時に派遣村でボランティアを行い、そこで得た経験が大きな理由となり、教員として2年間勤めたあと、POSSEと大学院に戻ったのだという。

POSSEには最近では年間1000件以上の相談の電話が鳴るという。その数は年々増えてきており、今年度はすでに1500件を超えている。そのすべてに対し、取りこぼすことなく応じることは難しく、とることができなかった相談の電話に対しては、折り返しの電話で対応している。今回は、その折り返しによる電話相談の一部始終を見せていただいた。

詳しい相談の内容は割愛させていただくが、実際の相談の様子を自分の目で見ることは、本や映像でしかその実態を知らなかった、労働問題に取り組む現場のリアルをまざまざと見せつけられ、驚きを感じるとともに、やはり労働世界に近接してきているとはいえ、1年を通して学んできた自分たちには、ある程度労働問題について知っているという自負があったが、それが見事に崩された。


NPO法人であるPOSSEは、相談員として働くメンバーに報酬は支払っていない。つまり相談員は完全なるボランティアで活動を行っているのである。それでも、電話やメールを通して相談をしてきた人たちに的確なアドバイスや提案をするためには、労働に関する法律をはじめとした莫大な知識が必要となるため、常に勉強は欠かせないという。


労働組合は現在機能しているとは言えない。現在その組織率は18%弱だが、そこには企業内労組を含む実行力を持っていない組織が多いとかんがえられる。中には「連帯」などの実効性を持った業種別組合も存在するが、まだその数は少ないのだ。



また、もし団交権で労働争議に勝ったとしても、人間関係などの面で、以前通りに職場に戻って働くのは難しい。これに対しては、労組を会社に根付かせることが最も肝要であると、佐藤さんは語った。


今、劣悪な労働環境を強いられている人から寄せられる相談の多くは、解決する場合が多いという。問題は、争えば勝てるが、争わない人が多いという点である。現代では、正社員・非正規・バイトという勤務形態にかかわらず、「ブラック」な会社が増えているのが現実だ。「労組」が持つなんとなく「近寄りがたい」イメージを払拭し、健全な労働世界を構築する「将来の目」を育成していくかが課題となるだろうと思った。





(文責:からさわ)